1.概要と目的
筆者は、「光と影の美」を主題としたこどもの遊び環境の創造に関する研究を実施している。その一環として「あかりの良否は光源・反射材・遮蔽材のバランスによる」との知見をこどもが体験的に学ぶ造形教育や、その指導者育成に従事している。本稿では、保育士資格や幼稚園教諭免許の取得を目指す学生23名を対象とした、授業実践の内容と成果を報告する。光源にLED、反射材・遮蔽材に段ボールを使用して造形し、学生の科学的思考を促して教育的意義を理解することを目的とした。
2.実践の内容
授業時間は、90分×8時数である。このうち導入を2時数、造形を5時数、考察を1時数とした。導入ではライトテーブル等を活用したレッジョ・エミリアの保育実践にも着目させた。造形では、光源にLEDプッシュライト(ヤザワ、透明・赤・青・黄・緑の5色から選択)、反射材・遮蔽材に板段ボール(ダンボールワン、185mm×255mm×3mm厚を約5枚)を使用した。まず段ボールをはさみまたはカッターで切断し、必要な形状と数量の紙片を製作した。次に紙片を立体的に構成して作品を製作した。約30分に1度、教室を消灯して、作品の中心または近傍にLEDを置いて点灯した。これらを反復して光源・反射材・遮蔽材のバランスを調整し、目標とする作品を完成させた。
3.実践の成果
作品を暗室に設営し、発表・鑑賞後に考察を行った。学生のレポートには、LEDには、あかりの結果に意外性があり、魅力的な造形教育ができる。段ボールには、加工方向で材料強度や造形難度に差異が生じる。反射・遮蔽効率が高く、造形が複雑なほど美しさが向上することを理解した等、あかりの使用効果や段ボールの造形材料の性質を学修できた旨の記述が見られた。