香椎≪まちの記憶≫博物館 ~パビリオンの設計と施工~

日本都市計画学会 九州支部長賞 受賞
福岡県建築士会 福岡・まちづくり活動支援センター 地域貢献活動助成事業 採択
九州産業大学 中期事業(部所別予算)

【梗概】 香椎≪まちの記憶≫博物館 ~パビリオンの設計と施工~

4年生:小金丸智文・榊 英貴・澤 優太郎・亘 裕司

1.研究の背景と目的

 現在、副都心土地区画整理事業が行われている香椎(福岡市東区)のまちの魅力について、居住者や就業者にたずねたところ、「交通の便や買い物の便がよい」「人と人との触れ合いがある」「歴史のあるまちである」「温かみのある人たちが多い」などの回答があった。その一方で、「(香椎駅前の)建物がどんどんなくなる」など、香椎副都心土地区画整理事業により日々姿を変えるまちの有様を残念に思う意見もあった。
 確かにこの事業により、過去からある建物が壊され、新しいものが建てられて、かつての香椎の面影がなくなりつつある。こうしたスクラップアンドビルドの状況の中で、私たちはこの事業による行政先行取得地に着目して、香椎のまちの記憶を後世に残す一助となることを目的とした研究を、香椎商工連盟や福岡市住宅都市局をはじめとする関係団体の協力を得て実施した。
 私たちは行政先行取得地に、設置と撤去が容易な単管パイプを使用した仮設のパビリオンを設置するための設計と施工を行った。その一方で画像や歴史資料などを収集して、まちの記憶として編集し、設置するパビリオンの内部において公開した。このパビリオンを拠点施設として、香椎のまちを博物館に見立てた一連のまちづくり実践活動「香椎≪まちの記憶≫博物館」を、公益社団法人福岡県建築士会福岡・まちづくり活動支援センター地域貢献活動助成事業として実施した。

2.香椎副都心土地区画整理事業

 香椎副都心土地区画整理事業は、現在、福岡市の東の副都心として位置づけられている香椎・千早地区の鉄道の高架化や幹線道路、駅前広場等の基盤整備や副都心の核となる多様な都市機能の導入を目的とする都市機能更新型の土地区画整備事業である。独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)九州支社によれば、その副都心形成の方針は次のように考えられている。

①「あれい構造」の副都心づくり
 JR・西鉄香椎駅周辺の地区に「生活文化核」、香椎操車場跡(千早地区)に「活動核」を形成し、2つの核の中間部を交流ゾーンとして位置づける(2つの核と1つの軸によってつくられる形が鉄アレイに似ていることから「あれい構造」と呼ばれている)。
②交流拠点性の高い副都心づくり
 国道3号線博多バイパス、東西連絡道路などの幹線網、鉄道の高架化等、骨格交通施設の整備を行う。
③広い地域の核となる副都心づくり
 「(福岡市)都市圏東部の多機能中心核」としての副都心づくりを目指し、広域的都市機能を導入する。

3.パビリオン設置の敷地選定

 パビリオンを設置する敷地については、まず香椎駅周辺地区の未利用空間を抽出し、その中から香椎商工連盟や福岡市住宅都市局香椎振興整備事務所との交渉を経て選定した。この場所は、香椎土地区画整理事業の生活文化核と活動核の間の交流ゾーンに位置する行政先行取得地であるため、自ずと来場者が集まることが期待でき、香椎≪まちの記憶≫博物館の拠点施設であるパビリオンの設置に適切な場所であると判断した。

4.パビリオンの形態と色彩

 パビリオンは4つの展示棟とこれらをつなぐ回廊で構成されている。棟のひとつひとつが「まち」を表し、来場者が回廊を歩くことによってまちどうしが繋がっていることをパビリオンの形態で表現している。来場者の4本の動線によって囲まれたスペースでは自ずと交流が生まれる。来場者各々が持つ香椎のまちの記憶の語り合いを促進する場となることが期待できる。これは香椎副都心土地区画整理事業の方針に掲げられる活動核と生活文化核、それらの中間部に位置づけられる交流ゾーンによる「あれい構造」からイメージした。
 またパビリオンの色彩は、骨組膜構造の屋根に葉を表す深い緑色、幹に相当する腰壁に落ち着いた茶色を使用した。これらは香椎に所縁のある綾杉(香椎宮の勅使通)をイメージしたものである。また壁面の幾何学的なデザインは、黒色の斜線列に対して朱色の斜線列を直交させ、歴史のある香椎のまちの記憶に新しい未来のまちづくりが重層して形成される、香椎副都心土地区画整理事業のイメージを表現したものである。

5.パビリオン設計の参考事例

 パビリオンは行政先行取得地を香椎振興整備事務所から借用して施工するため、限られた期間内での設置および解体・撤去を求められた。そこでその設計において私たちは、安藤忠雄と唐 十郎による下町唐座と、ダイワハウスによるパイプハウスを参考事例とした。
 これらはいずれも主要な構造体に単管パイプを使用しており、その設置および解体・撤去を容易かつ迅速に行うことが可能である。下町唐座は移動可能な仮設劇場であり、主要な構造体として工事用足場に用いる単管パイプを架構する工法を採用して工期を短縮した。
 またパビリオンは、仮設構造物とはいえ充分な強度が必要である。中空構造である単管パイプは、空洞部分が外部からの衝撃を吸収するため耐久性が高まると考えられ、また部材が軽量であるため作業効率の向上が期待できる。パイプハウスは、円形で中空構造である稲の茎や竹の幹が強風にさらされても折れにくいことから発案され、建築の工業化に貢献したとされる。
 私たちはこれらの事例を参考にし、株式会社傳建築設計事務所の技術支援を受けた設計を福岡市住宅都市局建築指導部建築審査課に提示した。後日、単管パイプの使用により充分な強度を保持するとともに、屋根を骨組膜構造として速やかな着脱を可能にすることを条件として、同課よりパビリオンの設置を承認された。

6.パビリオンの施工

 パビリオンの施工では、足場仮設工事を専門とする有限会社四島組の技術支援を受けた。私たちは設計に従い、まず主要な構造体として工事用足場に用いる単管パイプを架構した。次に木材を加工して製作した各棟の壁面を締め具であるクランプにより単管パイプに固定する予定であったが、骨組膜構造による屋根の取りつけのため充分なスペース確保できず、腰壁で壁面下部を支持し、結束バンドで壁面左右を固定する方法に変更した。一方、回廊の壁面は重量のため下部を接地させ、上部を屋根とビスで固定した。腰壁の裏側の添木は見栄えが悪く、すだれを使い目隠しとした。最後にペンダントランプを単管パイプの梁から釣った。

7.まちの博物館化の試み

 まちの博物館化のテーマは、まちの変化に関する学びである。香椎のまちの風景は、私たちが大学生となった4年前と比較しても大幅に変化しており、それまでのまちの記憶は薄れているのではないかと感じている。このことを踏まえ、香椎宮、香椎浜、JR香椎駅、西鉄香椎駅、キラキラ通りの5カ所に学習のためのパネルを設置した。パネルはパビリオンとのトータルデザインを施した。この中では、このようにまち歩きを行うとこのような学習ができるという解説が述べられている。まち歩きを促進するためにパネルにはアクセスマップを添付し、来場者が自由に持ち帰れるようにした。このようにして香椎のまちの博物館化を試みた。

8.外部評価と今後の課題

 本研究では、パビリオンへの来場者を対象にアンケート調査、研究協力者を対象にヒアリング調査を行い、パビリオンの設置などに関する外部評価を実施した。
 アンケートには「(パビリオンに)来てよかった」「(パビリオンの展示を見て)懐かしかった」「またこのようなこと(まちの記憶を課題とした研究)を行ってほしい」などという本研究を評価する記述が多く、パビリオン来場者の心を動かすことができるなど、一定の成功を収めることができたのではないかと考えている。
 一方で、「パビリオンはできてはいるが内容が薄い(展示資料が不足)」「(取り組みの)開催期間が短い」「(取り組みの)開催告知が不足している」という指摘を受けた。またパビリオンの外観・外構や内装にも、より力を注ぐべきだったと反省している。まちの博物館化では、まちの5カ所にパネルを設置することについて管理責任が発生した。またより注目される場所にパネルを設置する工夫が必要であることが分かった。
 パビリオンの設置に多大な協力を得た香椎商工連盟からは、管理方法に関する問題はないが、開催時期を10月中旬実施の同連盟主催イベント「香椎まちなか美術館」と合わせるとよいのではないかとの意見があった。これにより香椎振興整備事務所への敷地の借用申請が容易になる可能性があるとの助言もあり、継続開催の検討に際し留意すべき事項であると考えられる。
 これらの改善を目指し、本研究は来年度、建築学科卒業研究(論文)課題「香椎≪まちの記憶≫博物館~アーカイブの企画と制作~」(榊 英貴)、住居・インテリア設計学科卒業設計課題「香椎≪まちの記憶≫博物館~インテリアとエクステリアのデザイン~」(大嶌涼太・近藤明靖・末松大樹)として継続する予定である。

9.謝 辞

 本研究は、福岡県建築士会から活動助成を受けるとともに、香椎商工連盟および傘下の香椎キラキラ通り商店街、香椎みゆき通り商店街の協力、アイノ写真館の資料提供、傳建築設計事務所、四島組の技術支援、福岡市住宅都市局建築指導部建築審査課からの法規指導と香椎振興整備事務所からの敷地借用など、関係団体との協力体制を基盤にして実施できたものである。
 本研究は、建築士の資格を有しない建築学科学生である私たちが、どうすればどこまでの建築を建てることができるのかという挑戦でもあり、その過程は大変貴重な体験であったと振り返っている。支援していただいた研究協力者の各位に深く感謝を申し上げたい。

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