箱1個を作ることが、こんなに大変なことだとは思いませんでした。この研究活動を通して、ものづくりやデザインに対して謙虚な姿勢を持つことができたことが、最大の成果だったように思います。
製作のきっかけ(動機)と目的
昨年12月、私たちがフラワーアレンジメントスクール・リーズガーデン(北九州市小倉北区)から、同スクールの作品展で使用する展示装置の設計・製作を依頼されたことが、この活動のきっかけです。そこで私たちは、持ち運びが容易で簡単にたくさん作れる展示装置とすることを目的に、立方体の箱(CASE:ケース)を設計して、模型を使って展示方法を研究(STUDY:スタディ)し、その成果として展示装置の実物を製作・納品することにしました。
設計(工夫したこと)
私たちが設計した箱は、400mm×400mm×400mの1面だけ空いた立方体で、厚さ9mmのシナベニ合板5枚を12本のビスで止めるものです。この箱は、人が座ったときにちょうど良い高さであり、A4サイズの本などがすっぽり入る大きさになっています。私たちは日本学術振興会(ひらめき・ときめきサイエンス)からの助成を受け、箱を80個製作することにしました。
・量産可能
・ビス止めだけの簡単な製作方法
・主役は展示物 …
脇役としてのシンプルな形態
・A4サイズが楽に出し入れ
・座るのに良い高さ
・持ち運びやすさ
・スマートな9mm厚フレーム
・同一形態が可能にする
無数の組み合わせ
研究(利用方法/模型による検討)
私たちは箱の1/5の模型を製作し、積み上げたり空いた一面の向きを変えたりすることにより、約40通り以上の組み合わせと、箱を使用した展示方法を事例研究(CASE STUDY:ケーススタディ)し、その結果をリーズガーデンに提案しました。もちろん組み合わせ・展示方法は無限です。
製作(高校生対象ワークショップ)
今年7月、私たちは大学のオープンキャンパスに来た高校生に、模型で箱の組み合わせを自由に考えてみるワークショップを楽しんでもらうことができました。さらに箱の実物を高校生と一緒に製作しました。その結果、計画どおり80個の箱を製作することができました。なおこのうち8個は、オープンキャンパスの様子を視察したリーズガーデンの要望で、前後2面が空いた箱としました。その後、箱の納品を終えました。
使用(利用方法/展示装置として)
11月、リーズガーデンの作品展が門司港旧大連航路上屋多目的室(北九州市門司区)で開催されました。作品展では実際に私たちが製作した箱が使用されることで、展示装置としての可能性を、大変強く感じることができました。
研究の発展(企業との連携)
この箱は用途を決めてしまうことなく、私たちの生活をもっと自由に、より豊かにすることが可能です。12月、そうした多様性が認められ、この箱は株式会社レオパレス21の単身者向けマンションのモデルルームでの活用が決まりました。現在私たちは、その実物を製作・施工しています。