参画した生徒の感想(一部)
初めてステンドグラス制作に携わりました。普段身近にあるステンドグラスは全部同じ種類のガラスで作られていて、他の作品もそうだと思っていました。今回は様々なガラスが使われていて、とても素敵だなと思いました。実際に作ってみると、ガラスにテープを巻くのも細かくて難しかったけれど、すこくいい経験になったと思います。
最初、ステンドグラスに同じ高さではないガラスがあって不思議に思いました。廃材を使っていると聞き納得しましたが、廃材にもこんな使い道があることに驚きました。こんなふうに変わった発想からいろんな物ができると思うとワクワクしました。
製作者の考察
ステンドグラスに廃材を使用することを試み、製作に取り組んできた。普段使うことのない廃材のありかたについてじっくり考え、向き合うことができたと思う。あまリ着目されることのない材料かもしれないが、用途によっては幅広く利用できる材料だと思う。初めてステンドグラス製作の工程を体験し、思っていた以上に手間のかかる作業が多くて大変だった。
完成したステンドグラスは製作者の母校である鹿児島純心女子高校へ寄贈した。持ち運び可能なステンドグラスに仕上がっているので、行事にも活用できると好評だった。これからも身近に潜んでいる廃材に目を向け、新たな提案ができたらと思っている。
日本産業技術教育学会 コンテスト応募作品 三股あや加
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鹿児島純心女子高等学校との高大連携事業「普通高校における産業技術教育」として実施した。
1.概要と目的
この製作のきっかけは、インターンシップの研修先で割れて使われなくなったガラス瓶を見たことである。瓶は箱の中に無造作に置かれていたが、そこに太陽の光が降り注ぎ綺麗な光を放っていた。これを何かに活用できないかと思い、これを材料に用いてステンドグラスが作ることを考えた。ガラスには種類があり、スモークガラスや模様入りガラスは、ステンドグラスの材料として適さないが、筆者は建物の解体時に出たガラスを集め、ステンドグラスの主な材料として用いた。
ステンドグラスの設置場所は、鹿児島純心女子高校(鹿児島市)である。同校の生徒は、ステンドグラスがある空間に対するイメージや気持ちは人によってそれぞれ異なるが、ステンドグラスは学校に欠かせない重要な存在だと言う。筆者はステンドグラスを同校の生徒と共同で製作し、使われなくなったガラスの活用を考える活動を通し、生徒にとって特別な空間を同校に提供することを製作の目的とした。
2.設計の題材
ステンドグラスの設計の題材について、鹿児島純心女子高校の生徒・教職員を対象とした要望調査を行った。主な要望としては、聖書の一節にある「イエス・キリストが水を葡萄酒に変える話」を、ステンドグラスの設計の題材にしてほしいというものがあった。同校はカトリック系の学校であり、これは教科「宗教」の授業で頻繁に使われる教材であった。また同校には既にいくつかのステンドグラスが存在したが、「水を葡萄酒に変える」を題材としたものはなかったため、この要望を踏まえて設計した。
3.製作の過程
(1)フレームの選択
ステンドグラスのサイズは、530mm×410mmである。設計が全体的に青を基調としたものとなったため、フレームは柔らかいイメージになるように色はシルバーを選択した。
(2)下絵の配置
フレームの大きさに合わせて下絵を描いた。クリアファイル(またはトレーシングペーパー)に描くと、絵を移動できて作業が容易になった。
(3)図案のトレース
下絵をフレームに合わせた用紙に清書した。この図案が実際のステンドグラスに反映されるため、ずれが生じないように丁寧にトレースした。
(4)周囲のべベルパーツの選択
ステンドグラスの完成度を向上させるために、周囲にカットガラスを組み込んだ。これをべベルパーツという。形や大きさは様々であるが、この製作では長方形のべベルパーツを使用した。
(5)番号付け
各パーツに番号を付けた。できるだけ同じガラスを使用するパーツごとに連続番号を付けた。
(6)ガラスの選択
各パーツに使用するガラスを選択した。光をよく通すもの、不透明なもの、模様や凹凸があるものなど、ガラスの種類が多く、作業時間を要した。
(7)グラインダーによる加工
ガラスを削る機械であるグラインダーを使用して、角を取ったり、形を整えたりした。この作業により、クリアファイルの下絵と形・大きさが同じになるように最終調整した。
(8)ガラスカット
パーツごとに切断したクリアファイルをガラスにあてて転写した。無駄なくガラスを使用するために、一通り配置した後、油性ペンでトレースした。トレースした線に沿って、ガラスカッターで切れ込みを入れた。ガラスカッターに体重をかけて押し進め、切れ込みが入ったガラスをプライヤーに挟んで割った。さらにモザイクカッターを使ってできるだけ線に沿うように調整した。
(9)コパーテープ巻き
木箆を使用して、調整したガラスにコパーテープを巻いた。ガラスがコパーテープの中心となるように、またコパーテープは皺がよらないように巻く。巻き終えたら木箆を使って、コパーテープとガラスの間に空気が入らないようにした。またガラスの表面と裏面にテープがかかるように木箆で馴染ませた。この作業を全てのパーツで行った。
(10)配置・調節
コパーテープを巻き終えた後、パーツがマッチするか確認した。マッチしないパーツは、削り直した。
(11)はんだ付け
はんだとはんだごてを使って、ガラスを接合した。作業はゆっくり行った。焦ってはんだごてを滑らせてしまうと、はんだが「だま」になってしまうため注意を要した。しかしコパーテープの上にはんだが自然に付着するので、比較的簡単な作業であった。
(12)磨き
硫酸銅を薄く溶かしたものではんだを磨いていった。硫酸銅を付けたスポンジで磨くことにより、はんだが変色した。さらにワックスを使って全体を磨きあげて、ステンドグラスを完成させた。