福岡市旧東部市場のものづくり館(ファブラボ)へのコンバージョン

日本建築仕上学会卒業設計奨励賞 受賞 迫田和樹

問題背景

日本の建築は戦前の建物を残すが、戦後の建物は取り壊し、新しい建物を建てていることが多くなった。この背景には、立地の良い場所に建てる土地が少なくなったこと、次々と建てていく時代ではなくなったことが考えられる。今後は、既存の建物や敷地を有効に活用し、持続性を持たせるために保存・改修・再利用を行っていかなければならない。その一方でいわゆる中古ストック(既存の建物)の増加は止まらない。中古ストックにならないための工夫や見直し、地域にどうアプローチしていくかが重要な課題である。

中古ストック

日本の建て替えサイクルは20から30年と短く、今や日本の文化になりつつある「建てては壊しまた建てる(スクラップアンドビルド)」という考え方が既存の建築や空き地が増える原因となっている。 その方で新築物件に価値が見出され、中古物件は放置されている。この中古ストックによる問題として景観の破壊、治安の悪化などがある。

この問題はその周辺の不動産価格や地域ブランドにも影響する。そこで私は、空き物件や空き地をコンバー ジョンし、その地域の問題の解決、活性を条件として設計を行う。

コンバージョン

既存の建物を用途・機能変更して再利用することで、具体的には建物の解体・建て替えをすることなく、既存の構造躯体を最大限利用し、新しい用途の建物へ生まれ変わらせる手法で既存の建物の存在価値も高まり、将来に渡り新しい資産として生まれ変わる。低コストで済み、建て替えよりに比べてエ期が短い。 さらに解体手問や廃棄物も少ないことから、環境に配慮した手法として注目されている。

計画地概要

福岡市には3つの青果市場があったが経営不振により、平成22年から3つを統合する計画が進められ、現在アイランドシティに移転し、新青果市場(ベジタブルスタジアム)が誕生した。旧東部市場は、福岡市東部地域における青果物流の中心として、 補完的な役割を担っていた。

コンセプト

九州産業大学を所有者及び運営者とし、大学生と地域住民をターゲットに考え、地域住民からの要望である「生活利便性の向上を図るための商業機能を含んだ複合施設」を目標に計画を行う。この土地に新たな価値を加えて持続性のある施設にするために、旧東部市場の特徴である補完的な役割を活かしたコンバージョンのプランを提案する。

今までのモノ(野菜・果物)の流れは、生産者からモノを頂き、一時保管し、せりで適切な価格をつけ、消費者が手に取る。これからのモノの流れは、 モノの対象を機械や工具に置き換え、旧東部市場にストックし、ストックしたモノを大学生や地域住民が手に取る仕組みを行う。そのような仕組みが可能なのは、ファブラボである。

本計画では、大学生と地域住民のコミュニケーションを、ものづくりを通して形成していく施設を提案する。ストックするデジタルエ作機械としては、3Dプリンターやレーザーカッター、カッティングマシン、デジタル剌繍ミシンなどを常備する。さらに、レンタルという形で施設を利用させることにより、大学に利益が出る。ファブラボとは、デジタルエ作機械を備えた実験的な、市民工房のネットワークのことであり、ものづくりをシェアする工房が世界的に横の繋がりを持つことで持続的な文化の発展を目指している。大学主催のイベントや学生と地域住民が協力して行うプロジェクトなどをする学びの場を設けることにより、地域が一体となるだろう。

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